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2019年4月

モーツァルトと様式の統一感と人生観と

折しも史上初めてブラックホールが撮影されたところですが、モーツァルトのピアノソナタにも名作に挟まれたブラックホールのような曲が存在します。
2曲しかない短調のうちの1つ、強烈な個性を発揮するハ短調K.457と、全ソナタの中で最も短くソナチネのように愛らしいハ長調K.545に挟まれたへ長調K.533がそれです。
昨日もちらっと書いたように、このソナタには2つの番号が与えられています。
第1楽章、第2楽章がK.533、第3楽章がK.494。
一体なぜ1つのソナタに2つの番号が与えられているのか。

1787年12月、前任者グルックの死によりモーツァルトは待望の宮廷音楽家となります。
そのすぐあとに作曲されたK.533の第1、2楽章に2年前作曲してすでに出版もされているロンドを第3楽章としてくっつけて1788年初めに出版したのです。
モーツァルトの例に漏れずこれも借金返済のためと言われますが、そのような名誉ある職についたということを早く披露したかったという話もあるようです。
いずれにしてもそのような経緯で無理やり違う時期の違うスタイルの楽章がくっつけられたこのソナタは、後世の批評から「様式感の統一などいささかもかえりみない」と酷評され現在までこの曲が知られざる存在となる原因となっています。
しかし、天才的なバランス感覚を持ったモーツァルトが、たとえ旧作とくっつけたとしても本当に「いささかもかえりみない」ような曲を作ったでしょうか?
たしかに後期の交響曲すら見えてくるような充実した第1,2楽章に比べ第3楽章はあまりにもシンプルです。
それを持って様式の統一がないというのであれば、他にもそのような曲はたくさんあります。

そもそもそこで言う様式の統一というものは、「始まったものは全て最後の締めくくりのためになければならない」というベートーヴェン以降の感覚に基づくもので、この時代は各楽章の結びつきはもう少し弱かったはず。
そう考えて無心にこの曲と向き合ってみると、入り組んだ2つの楽章の後に現れる第3楽章のなんと清らかなことか。
人生も人の心もドラマと同じではない。
複雑な場面の後に何の脈絡もなくシンプルな美しさが来てそれが心を打つ、それこそが人生の縮図なのではないでしょうか。

 

そんなK.533+494ピアノソナタ、
そして
ヴァイオリンソナタK.377へ長調
ヴァイオリンソナタK.379ト長調
ピアノソナタK.311ニ長調を
4月20日にプリモ芸術工房で演奏します。

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4月の予定

さてさて、4月の予定をまとめてみました。といってももう10日以上が過ぎてる(笑)

まずは、例のごとくもう終わってしまいましたが6日はカワイ浜松での初リサイタル。温かい雰囲気の、また本気プログラムのとても良いコンサートになりました。

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そして、うまく告知ができていませんでしたが11日は境港市文化ホールシンフォニーガーデンで講座でした。ショパンノクターン遺作や幻想即興曲から始まりさまざまな曲を少しずつ弾きながらショパンの人生を追体験し、またテンペストの物語を読み解き、そしてモーツァルトK.545やブルグミュラー25の練習曲にも言及すると言う駆け足の講座でしたが、素晴らしいホールとピアノ、そして和気藹々とした境港の先生方に囲まれてとても良い音楽空間になりました。

明日13日は戸塚で前橋汀子さんとベートーヴェンヴァイオリンソナタのシリーズ第1回。5年に及ぶリサイタルシリーズというとても長大な企画が終わった後は何をされるのかなと思っていたら、ベートーヴェンのソナタを2ヶ月で6曲弾くという、挑戦を続けられる姿に敬服です。

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来週20日はプリモ音楽工房で久々のモーツァルトシリーズ。第6回の今回は中期の名曲、ヴァイオリンソナタK.377、379、ピアノソナタK.311、そして後期の問題作ピアノソナタK.533/494。なぜこの曲に2つのケッヘル番号がついているのか!!またあとで(多分)解説しましょう。

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23日から26日は秋吉台室内楽セミナー。去年は初参加で手探りでしたが、そこから始まった人の繋がりがたくさんあり、今年はさらに楽しくなりそうです。
http://akiyoshi-hibiki.jpn.org/concert

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リサイタル in 浜松

カワイ浜松コンサートサロン「ブリエ」での初リサイタル終わりました。今日の空間はすごかった。何かが降りてきたんじゃないか、と思うほど。それも音の世界にぐいぐい引っ張られていくと言うのではなくて、何も頑張らずに淡々と音を鳴らしていくとどんどん世界が作られていきました。特に後半のブラームスですね。


何がそうさせたんだろう。あの空間なのか、SKの音色なのか(今日はすごくいい音色を出してくれました)、ここのところ何回もOp.118を弾いてるから自分の中の何かの扉が開いたのか、はたまたモーツァルトの暗譜がかなりしんどかったのでそこから解放された安堵感からなのか(笑)。

ちなみにプログラムは以下の通り

モーツァルト:ピアノソナタK.311ニ長調

モーツァルト:ピアノソナタK.533へ長調

休憩

ブラームス:創作主題による変奏曲ニ長調Op.21-1

ブラームス:6つの小品Op.118

アンコール

シューマン:トロイメライ


浜松ではまたちょくちょく小さなリサイタルをしたいと思っています。「ブリエ」がプリモ芸術工房やカフェモンタージュのような位置付けになっていくといいな!!

 

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3月を振り返って

春ですねー。今年は冬がずいぶん長かったような気がしますが、きっと忙しかったんでしょう。

さて、3月の活動を振り返ってみましょう。

まずは3月1日。もうはるか昔のことのような気がしますが、宮崎でカウンターテナーの藤木大地くんの「ココから音楽大作戦」。彼の十八番の武満徹「死んだ男の残したものは」や、僕もソロでカンパネラやラフマニノフ「鐘」を演奏したりと純クラシックもあり、シンガーソングライターのJILLEさんも入って地元の小中高生の合唱団も一緒にポップスもやったりと盛りだくさんなコンサート。かなり楽しかった。

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3月4日は三井日本橋タワーのアトリウムコンサート。チェリストの金木博幸さんとの共演でブラームスのチェロソナタや、ソロでフランクの「前奏曲、コラールとフーガ」など弾きました。オープンスペースではありましたが、天井の高い教会のような響きで、特にコラールは天からの祝福に包まれているかのようでした。

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3月8日は広島で松本和将と門下生のコンサート。生徒たちと初めての連弾も楽しかったし、2人ともレッスンでは1度も聞いたことのないような表情の演奏をしていて感銘を受けました。やっぱり本番の演奏を聴かないといけないね。自分の演奏は、ブラームス創作主題による変奏曲からテンペストと言うなかなかシビアなプログラムでしたが、緊張感をコントロールしてそれぞれの曲の真価に近づけたかな。

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3月11日は京都のカフェモンタージュでブラームスOp.118やフランク。全く関連のなさそうな2曲ですが、続けて弾くとブラームスの6曲目で絶望と孤独に支配された魂がフランクの曲によって救済されるようなストーリーになりました。これもいいかもしれない。

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3月14日、19日、20日はカワイ音楽研究会のグレード試験のための講座。普段課題曲講座はしないのですが、こちらは全編バッハということで自分の勉強にもなると思いやらせて頂きました。インヴェンション・シンフォニアが3曲ずつ、平均律が6曲。しかも平均律は解説よりもぜひ演奏が聞きたいですと言うことで、このスケジュールの中で死に物狂いで練習したんですが、久しぶりにバッハと向き合っている時間はとてもとても豊かなものでした。

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3月17日は倉敷音楽祭「倉敷のヴィルトゥオーゾvol.4」。毎年チェリストをゲストに迎えてるんですが今年は今までで一番若い、という倉敷メンバーの誰よりも若い上野通明君。バリバリのソリストなのに室内楽も本当の意味で上手くて、派手ではないけれど内にいろんなものを秘めている彼の音が全体の音色をどんどん変えていきました。 ヴァイオリンは岸本ほのかちゃんも初参加、ヴィオラは安保惠麻さんにゲストで来て頂き、華やかになりました。

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3月21日は名古屋音大での公開レッスン&ミニコンサート。近隣の音楽高校の生徒さんたちを5人レッスンしましたが、とても楽しかった。そして5人レッスンしたあとにそのままブラームスOp.118を弾くのはさすがにしびれましたねぇ。「全然余裕です」とか言ってたのはどこの誰だ!

3月23日は前橋汀子さんのお供で青森へ。まさかの雪景色です。僕にとっては豪雪でしたが、多分大したことはないんでしょう。みんな温かくて、もちろん前橋さんの演奏も素晴らしくて、とてもいい時間でした。

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3月24日は久々のパルテノン多摩でのソロリサイタル。ベートーヴェン月光、テンペストにブラームスOp.118というまさに「勝負プログラム」。なんの不安もなく音楽にのめり込める感覚。忘れられないコンサートになりそうです。

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3月26日から30日までは毎年恒例のカンマームジークアカデミー in 呉です。
初日26日はアカデミーアーティストによるスペシャルコンサート。前半はピアノが混ざった小編成の室内楽をいくつかプログラミングし、後半はシューベルトの弦楽四重奏曲「ロザムンデ」。客席でお客さん気分で聴いてましたが、綺麗だったなぁ。
アカデミーのほうは今年は子供が多くてどんな雰囲気になるか少し心配してたんですが、いつも通りに熱い空気が流れてました。真剣な表情、笑顔にあふれ、例年通り泣く人も何人もいましたが(意外に大人が多かった)、それぞれ乗り越え最後の修了演奏会では最高の演奏を聞かせてくれました。

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