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ソナタ形式について〜リサイタルプレレクチャーから




汐留イタリア街のベヒシュタインサロンで、5月18日の浜離宮朝日ホールでの「松本和将の世界音楽遺産」リサイタルのプレレクチャーをしてきました。カワイ表参道でもベートーヴェンピアノソナタ全曲講座&コンサートをしていますが、今回はレスナーさん向けの弾き方などの講座ではなくて、あくまでもリサイタルをもっと楽しんでいただくための企画。あまり専門的なことはしゃべらずに、感覚的なことや僕のこのプログラムに寄せる想いなどを1時間半ぶっ通しで喋ってきました。
「ソナタの黎明、進化、そして革命」というタイトルなので、まずはソナタとはどういうものか、から。本公演プログラムとは関係ないですが、ソナタ形式が一番よく分かるモーツァルトのK.545を題材にして、第1主題とか展開部などの用語を使わずに説明。ソナタ形式の形を知識として知るよりも、どんな雰囲気でテーマが出てきてどう変わっていくか、ということを体で感じてもらうほうが大事です。これは多分音楽を学んでる人にも足りない視点だと思う。そして美しい第2楽章、おまけのような第3楽章にも少し言及。ここ大事なポイントなんです。どうしても第1楽章を充実したソナタ形式で書いてしまうと終楽章あたりはおまけ感が出てしまいます。これはベートーヴェンの第3番Op.2-3にしても同じこと。あれだけスケールの大きな第1楽章、そして素敵な第2楽章のあとには、口直しとデザートのような3、4楽章が続くんです。その軽さがいいという向きもあるでしょうが、そこは後に「苦悩を経て歓喜へ」なんて言い出したベートーヴェンのこと、多分釈然としないものを感じていたに違いない。きっと。
第1番のソナタでも悲愴でも、最後まで緊張感を保たせようとした形跡は感じられるものの、いまいち完成されているとは言い難いところがあるんですよね。そこでベートーヴェンは考えた!(たぶん)「ソナタ形式を使っている限りは第1楽章偏重かるは逃れられない。敬愛するモーツァルトもトルコ行進曲付きソナタでソナタ形式を使わずに書いてるじゃないか。そうだ、やってみよう!」ということで12番Op.26でモーツァルトと同じように変奏曲から始まる曲を書いてみました。第3楽章には葬送行進曲を置いてみました。そうすると不思議!第3楽章にスーッとスポットライトが当たるんです。しかし、さすがに葬送行進曲で終わるわけにはいかないし、そこから華々しいクライマックスに持っていくのもおかしいし、と思ってるうちに煙に巻いたような第4楽章が出来ちゃいました。ちなみに、同じような構成で葬送ソナタを書いたショパンは、この曲を好んで演奏していたそうです。
さて、続く第13番Op.27-1でさらに自由な形のソナタを書いたベートーヴェンは、満を持して月光ソナタを書きます。コンセプトは、「嵐」。この曲の大事な部分は月の光に照らされた湖の部分ではなくて、終楽章の嵐の場面なんです。第1楽章では実は何も起こらない。それも7分もの長い間。美しい月夜のノクターンではないのだ。美しく陰鬱な沈黙が続いた後は第2楽章で楽園のまぼろしを垣間見せられる。そして第3楽章でようやく物語が動き始めて、とてつもない嵐に巻き込まれていく。
こんな物語を紡ぐためには一度ソナタ形式をなくす必要があったんでしょう。この曲で大成功したベートーヴェンは、その後はソナタ形式を使っても同じような緊張感を書き出すことが出来るようになるのですが、それはまたその後のお話。
と、まあこんな感じで例によってかなりたくさん弾きながら喋ったわけです。うーん、楽しい(笑)

ちなみに本公演のプログラムは、以下の通りです。

ハイドン:ピアノソナタハ長調XVI:50第1楽章
モーツァルト:ピアノソナタイ短調K.310
ベートーヴェン:ピアノソナタ第3番ハ長調Op.2-3
休憩
モーツァルト:ピアノソナタイ長調K.331「トルコ行進曲付き」
ベートーヴェン:ピアノソナタ第12番変イ長調Op.26
ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」



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コメント

お洒落なサロンでの、たっぷり充実&期待ワクワクのレクチャー!ありがとうございました。
新たな発見もあり、笑いもありhappy01
とても楽しい時間でした。
5月の本番〜期待してます‼️

投稿: YUKI | 2016年4月14日 (木) 10時09分

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