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ベートーヴェンピアノソナタ第4番の考察

表参道のカワイでベートーヴェンピアノソナタ全曲解説講座のシリーズ2、第一回を行ってきました。
せっかくなのでここにもその内容を記そうと思います。
といっても実はこのブログを書いているのは前日の夜なのですが。

まず、驚くべきことにこの初期のソナタはハンマークラヴィーアソナタを除けばベートーヴェンの全ソナタの中でも最も規模の大きいものなのです。
若きベートーヴェンがどれだけの労力をこの曲につぎ込んだかが分かるでしょう。

さて、早速内容に入りましょう。
まずこの曲の速度記号はAllegro molto e con brioとなっています。
極めて速く、輝かしく、これだけを見てもこの第一楽章がどのようなキャラクターを持っているのかが分かるでしょう。
なのに、意外にゆっくりと落ち着いて弾いている人が多いのが僕には不思議でなりません。
テンポだけの問題では無いですが、少なくとも非常に生き生きと弾かれるべきなのだと思います。
同じAllegro moltoの指示は、例えば交響曲第一番の第4楽章、また交響曲第二番の第4楽章にも出てきます。
これらの曲がどれだけ生き生きとしているかを聞けば、このソナタもどんなふうに弾けばいいかがおのずとわかるでしょう。

では、最初の部分を見ていきましょう。
まず最初はpの指示で始まります。
そして3小節目には突然sfが出てきます。
このsfはいったいどのくらいの大きさで弾かれるべきなのでしょうか。
その前にもう少し先まで見てみましょう。
5小節目からは最初の4小節とは違うパッセージが出てきます。
あたかも最初の4小節はイントロダクションで、5小節目から音楽が始まるかのように見えます。
確かにそこで音楽の流れは若干変わるのですが、大きく見ると最初から17小節目までは1つのフレーズなのです。
では最初から大事な音だけを取り出してみましょう。
ソーミ、シーソ、ここまではいいですね。
ではその次の小節からも最初の4小節と同じ音型で歌ってみましょう。
そうするとミーシ、ラーファ、ミー…となります。
少し補足はしていますが。
これは最初から歌ってみると階段を上っていくかのようにドンドン音が上に上にと羽ばたいているのがわかると思います。
これだけを見てもこの曲は未来への希望に満ち溢れたとても生き生きとした曲なのです。
では最初の問いに戻りましょう。
3小節目のsfはどのくらいの音量で弾くべきなのでしょうか。
実は僕は音量自体はそんなに重要ではないと思っています。
それよりも、最初の2小節でソーミと一瞬山を下りかけたそのメロディーが階段を上っていくきっかけとなるエネルギーになることが大事なのだと思います。
そう考えるといきなりそこで雷が落ちたような大きな音にはならないですし、また何も凹凸のない平原のように同じ音量にもならないはずです。
そのようにドンドン上っていくためには、このソーミの音型を解決してしまわないように弾かなくてはなりません。
細かいアーティキュレーションを考えるともちろんソよりもミの方が小さくなるのですが、そこで終わってしまわずにこのミの音を踏み台にして次のシの音に登らないといけません。
その後も同じで11小節目あたりを山としてまた降ってきます。
そしてその山の最後の部分がもう一度繰り返されます。
ここで面白いのが9小節目から始まる山はsfが2小節目の真ん中にあるのに対して、次の山では4小節目にあります。
これによって2つ目の山の方が解決したという感覚が強く感じられます。

さてさて、ここまで書くだけでもう30分も経っている…
多分講座で喋ると5分か10分位の内容だと思うのですが。
本を書くというのは大変な作業なのですね。
エンドレスになりそうなのでここらで第4楽章について軽く書いて終わろうと思います。
この楽章はとてもとても幸せな感情に満ちていると思います。
この上から降りてくるメロディーのなんという満ち足りた表情!
「あー、なんて幸せなんだ」と言うベートーヴェンの独り言が聞こえてくるかのようです。
次の部分ではその幸せな気分を胸に踊りまで踊ってしまいます。
そしてもう一度幸せを語ったその瞬間突如としてその幸せは不気味な音色にかわり嵐が訪れます。
ここでのsfの位置が面白いですね。
本来あるはずの1拍目ではなくずらした位置にあることによって、聞いている人は不安定な状態に陥り、
それでもずっと一定のリズムが続いているので身動き気をすることができなくなります。
この手法はこの後のたくさんの作品でベートーヴェンがどんどん熟成させていく典型的な手法です。
そしてその嵐も去りもう一度幸せを語ります。
最初と同じようなくだりがありさらに幸せになった主人公は1オクターブ上でまた幸せを語ります。
ここまでくるともう邪魔するものは何もないはず。
先ほど突然不気味な音が訪れたオクターブの上行型でも今回はちゃんとfのまま最後まで行くことができます。
と思ったその瞬間思いがけずEdurに転調してしまうのです。
まさに青天の霹靂。
最初と同じ幸せのモチーフのはずなのに心は途惑い迷い、ぐるぐると出口を探して彷徨ます。
161小節目でやっと出口を見つけ後はもう不安も完全になくなったやすらぎの歌です。
最後がppで終わるのも、幸せが消えていくわけでもなく心が沈んでしまうわけでもなく、
すべてをゆだねて安心した気分になれたということのだと思います。
なのでこの曲の最後には、静かだけど温かくて包み込むような音色が必要です。

ではソナタ第4番の解説はこのくらいにしましょう。

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コメント

(σ・∀・)σゲッツ!

投稿: ぷぅ | 2014年11月 8日 (土) 19時51分

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