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涙の音「リサイタル in 倉敷」 

正直なところ、

こんなスケジュールで一つ一つのコンサートのクオリティを確保出来るはずがない、って思ってた。

いや、スケジュール立てたのは自分自身で、誰にも文句は言えないし、

仕事を受ける時点でもっと考えないといけないんだけど。

今日の時点で9月に入って7回目の本番、

講座も含めれば5つ目のプログラム。

難曲のシューマンコンチェルトも、

すごく内容の濃いショパンのソナタ2曲もあって、

さて、自分はボロボロの出来になるか、倒れてしまうか、

どっちかかもしれない、なんて思ってたんだけど、

つくづく、追いつめられるとパワーが出るタチだね、自分は。

今日のような演奏は1年に1回出来るかどうかかもしれない。

もっとミスの少ない演奏も、もっと音楽的に完成度の高い演奏も、きっと出来るだろうけど、

ここまで気持ちをぶつけることの出来た演奏会は、

自分の人生の中でもほとんどなかったかもしれない。

自分の演奏は、情熱的だとか激しいとかよく言われるけど、

自分の中では意外とすごく冷めて冷静な一面があって、

それは崩れないように、全体の均衡を保つようにするためには、

かならず必要なものではあるんだけど、

そのバランサーがあまりにも強く働いて、心の最後の扉を開けることなんてどうやって出来ないと思ってた。

バランサーが強いからこそ、どれだけ激しい表現や大袈裟な表現をしても絶対に崩れないわけだけど。

それは人としてもやっぱりそうで、自分の最後の扉は自分自身にも開くことが出来ない。

でも、今日はすごく扉が開いた気がします。

そしたら一緒に涙も溢れてきて、

本番のステージの上で涙が流れたのは初めてかもしれない。

泣きそうになる、とかはよくあったけど(笑)。

気持ちをぶつけ過ぎて破たんをきたす寸前くらいになった箇所もいくつもあるけど、

ソナタの、特に2番はそれでいいんだと思う。

どれだけきつい気持ちをぶつけても、この曲は受け取ってくれる。

ショパンが抱えてた傷はそんなもんじゃない。

全部理解して受け取って一緒に泣き叫んでくれる。

その辺が、包み込もうとするシューマンとは全く違うところ。

音楽は自分の心を開いてくれる。

傷も悲しさも全部含めて。

それが涙の音となって空間に解き放たれて、

今度は聴いている人の胸の奥にある何かを共鳴させていく。

どれだけ傷を被ればもっといい音が出るんだろう。

演奏家として生きていく道を選んだ瞬間から、

もはや人は漫然とした生活なんて送れない。


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コンサート」カテゴリの記事

コメント

素晴らしい演奏をありがとうございました!

一音一音心がこもっていて、演奏を通じてショパンの思いまでもが伝わってくるようでした。聴いていて涙が出てきたのは初めてです。これほどまでに感動したコンサートはありませんでした。
演奏が終わってからも、本当にもっともっと・・・ず~っと聴いていたい気持ちになりました。
次回は友達も誘って一緒に聴きたいと思っています。またぜひ岡山へコンサートに来て下さい♪

投稿: あるる | 2010年9月15日 (水) 18時45分

私は、松本くんの演奏を「情熱的で激しい」と思ったことは一度もないよ。
暗闇に落ちる一滴の光のしずくみたいな音を出す人だなぁと思っています。

「涙の音」って表現はぴったりですね…。

また、演奏聴きに行きますね。

投稿: hisalin | 2010年9月14日 (火) 00時24分

自分がなぜ傷をもっているのか、わかった気がする、そんな瞬間が今まで何度かありました。
もし今回の演奏を聴くことができていたらなあと思いますが、ここでこうして気持ちを伝えていただいたことで、共有させていただけた。感謝です。

投稿: hiroe | 2010年9月13日 (月) 22時33分

開かれた扉から解き放たれた音は、確かにあの空間を共有した人、みんなの心に届いたはずと実感できました。
聴いている私の心の扉も、自然と開いていたように感じます。
心の奥にまで、直接響いてくる「音」に、呼び起こされるような感情の波が寄せては返す、不思議な揺らぎが会場全体を包んでいくようでした。
ありがとうございました。
confident

投稿: ひなまま♪ | 2010年9月13日 (月) 21時35分

演奏会行ってきましたrun
って感じではないですね。異次元で不思議な空間を体感してきましたrunっていう表現の方が相応しいような、それくらいグッと迫るものがあるステージでしたconfidentあの貴重な時間をシェアできたことを本当に嬉しく思います。

昨日が遅ればせながらで取った夏休み最終日だったのですが、お蔭様で素敵に締め括ることができましたnotes

ま、今日から仕事復帰で気が重かったことは言うまでもありませんが。

仕事が嫌すぎて胃が痛いけど、必要なのは太○胃散ではなく生のプレリュードnotes
良い音楽は心の良薬ですconfident

投稿: ゆうこりんご | 2010年9月13日 (月) 20時49分

ピアノソナタ圧巻でした。

もしアンコールがあれば、余韻が少なくなってしまっていた
のかもしれません。
それほどまでに強烈な印象を受けました。
本当にありがとうございます。

投稿: Chisato | 2010年9月13日 (月) 13時18分

本当に素晴らしい演奏でした。
あんなに、コンサートの最初から最後までぐっと惹きつけられたまま聴くなんて初めてでした。
トークも松本さんのピアノや音楽に対する気持ちやお人柄を感じることができて、また、プログラムへの想いも知ることができて、とてもよかったです。
これからも頑張ってください。
本当に素敵な演奏をありがとうございました!!!

投稿: ちか | 2010年9月13日 (月) 11時40分

しばらくぼう然としていました。あんなに心打たれたピアノは初めてです。特に、ソナタの2番は自分がどこにいるのかわからなくなるような錯覚?におそわれました。
アンコールなくてよかったです。

プレリュード、正○丸のにおいは全然しませんでしたよ(笑)ふわふわのベッドでまどろんでる感じになりました。

ステキなコンサート本当にありがとうございました。

投稿: hana | 2010年9月13日 (月) 06時18分

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