« ドイツ物 | トップページ | 大谷記念美術館 »

長編小説

ベートーヴェンのソナタの魅力って、長編小説みたいなもんですな。

語り口の巧さ、個性的な比喩表現、

そういうスッと飛び込んでくる部分ではなくて、

長い目で見た伏線の絶妙な張り方、ドラマの起こるまでの物語の流れ、

そこでいかに印象的なフレーズを作り出すかではなくて、

その印象的なフレーズをどこでどのタイミングで使えば一番効果的に心に入り込んでくるのか、

そんなところまで見据えた計算、

そんなところに良さがあるんじゃないでしょうか。

もちろん一部分だけ聞いても十分魅力的ですが、

全曲通して聴いて初めてその真価が分かるように出来ている。

たとえば、運命の4楽章では歓喜が押し寄せるわけですが、

それも3楽章の暗くて長いトンネルをくぐり抜けた後だからこそ大きな爆発になるわけです。

その長いトンネルの前には、3楽章冒頭でホルンで堂々と鳴らされたテーマが極限の緊張感を持って静かにピッチカートで演奏されていて、

堂々としたカッコイイメロディーだという記憶がまだ残ってるそのうちに、まったく同じものがこれ以上ないほど静かにならされるから、

その対比で余計に印象的になるわけですね。

そして、そのためには、フォルテッシモで弾いてもピアニッシモで弾いても成り立つモチーフというのを作り出さないといけないわけで、

そのためにはなるべく簡潔でしかも印象深いモチーフが必要となるわけですね。

この意味において、

運命のジャジャジャジャーンというモチーフほど短くてしかもドラマチックなものは、

他になかなかないでしょう。

これこそが、ベートーヴェンが完成させた「主題労作」というスタイルですね。

こうやって逆から読み解いていくと、なんかまた違った見え方をして、よりその意義がわかるような気がするなぁ。

考えれば考えるほど、ベートーヴェンの音楽ってよく出来てますshine

|

« ドイツ物 | トップページ | 大谷記念美術館 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

苦悩から歓喜へって、ベートーベンがつかんだ真理?ですよね。
確かにベートーベンの音楽って、長編小説みたいです
ひとつひとつ、物語が書けそうな…

投稿: 眠り猫2 | 2009年7月19日 (日) 12時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/513406/45671758

この記事へのトラックバック一覧です: 長編小説:

« ドイツ物 | トップページ | 大谷記念美術館 »