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演奏家

ここ数年、曲を仕上げるのに費やす時間がずいぶん早くなってきた。

昔ならとても仕上がらなかっただろう、という期間でも、形になってしまう。

演奏家をやってると、学生時代と違っていくらでも一つの曲に時間をかけて打ち込めるわけじゃないから、とても重要なことだと思う。

ホロヴィッツくらいの超大物ピアニストは別だろうけど、やっぱりいろんな仕事があればいろんな曲を弾かなきゃいけないから、
リパッティのように「皇帝をレコーディングするには準備に5年必要です」なんて恵まれたことは言ってられないわけですよねぇ(あやふやな逸話ですが・・・)。

でも、短い期間で仕上げる分、忘れてしまうのも早いようで、その点やっぱり昔長~~い時間をかけて仕上げた曲はいつまでも覚えてたりする。

小学校3年の時に弾いた、湯山昭さんの金曜日のソナチネの1楽章なんて、今でも暗譜で弾けるもんなぁ・・・

というようなことを、今回バラード3番を練習しながらつくづく思ったわけです。

あ、ちなみに、9月28日の玉野のくらび舎と10月1日のサロン・テッセラ、
チラシに書いてないものとしては、

バラード第3番
ノクターン第11、12番
3つのマズルカOp.50

をやることにしました。

バラード3番は、いつだったかなぁ、まだ芦田門下だった中学生くらいの時に、延々と練習してたんです。

どのくらいか覚えてないけど、まあでもその頃のことだから、3ヶ月以上はかけてただろうなぁ。

しかも今みたいに1リサイタル分の曲を仕上げるわけじゃないから、ひたすらバラードばっかり弾いてるわけ。

すると、今回久しぶりに弾いてみても、不思議と指が次の音に自然に動いてくれるんですよねぇ。

熱情とかもそう。

というか熱情は、アンコールピースを除いては「いつでも弾ける曲No.1」だと思う。

楽譜を見るのは音を思い出すためじゃなくて、もう一度楽想を練り直すためだけ。

それに引き換え
幻想ポロネーズとか、あれだけ気に入って深く研究したはずなのに、
久しぶりに弾いたら細かい部分とかがうやむやになってたりする。

悲しい。。。。

まあ、2,3回弾けば戻るわけですが。

でも、つい2ヵ月前に弾いたばっかりなのにねぇ。

ん???

いやっ、歳のせいではないぞっ!!

あくまでも、取り組んだ時間の短さのせいだぞっっ!!

そういう意味では、ドビュッシーのベルガマスク組曲とかもう弾けないんじゃないかな(笑)。

難解で深い幻想ポロネーズと比べたら遥かに短い時間で仕上げたので。

フランス物がもともと苦手だから、という説もありますが。。。

ラヴェルの曲なんかも、あっという間に抜けてしまいますねぇ。

この前もレッスンに水の戯れを持ってきたコがいて、手本で弾いてたのですが、「自分は今初見で弾いてるのか( ̄□ ̄;)!!」というくらい指が行かなかったんですよね。

これは自分だけかと思ってたら、碧南で共演した同い年でパリ在住の広瀬悦子さんも言っていたので、万国共通のことかもしれない。

自分は和声で覚えるので、当たり前のような和声でない曲になったときにはなかなか覚えられないということかな。

そういえば、僕は初見はかなり得意なほうなのですが
(ちなみに世界的レベルの初見の達人は、メシアンとかの現代曲もパッと見て弾けてしまうそうで・・・・。とてもそんなレベルではありませんがcancer)、
ドビュッシー以降くらいになると途端に初見がきかなくなるんです。

たぶん、次の和声を予測した上で、和声に基づいた指の運びをしてるんでしょうね。

だから、モーツァルトのソナタとかではたくさん音が並んでいてもいっぺんに和音を掴めるのに対して、メシアンとか弾くときは下から一音一音確かめながら読んでいく、というような初心者のような譜読みになってしまいます。

一体どうやったらこんなものが初見で弾けるのか。。。

読み方が全然違うんでしょうね。

そういう人達は、絶対的な音を一つ一つ瞬時に読むことが出来るんでしょうね。




さて、話が逸れまくった・・・・

まあそんな感じで日々ショパンを練習してますよ、という話です。

ちなみに、ノクターンはこの2曲を弾けば、全19曲のうち9曲を弾いたことになる。

過半数♪♪

それに比べてマズルカは、64曲とかある中のたった10曲。

実は、マズルカはずっと避けてきた曲集なんです。

でも最近、なんだかマズルカのほうがしっくりくる。

ポーランドの踊りの独特のリズムで、ワルツの感覚とも違うし、とりあえず一通り歌ってもきれいには聞こえないしで、苦手意識を持ってたんだけど、今の自分にはノクターンよりマズルカのほうが感覚にピッタリくるのかもしれない。

それにしても、ルービンシュタインのノクターンはいい!!!

決して最も好きなピアニストではないんですが。

でも、なんというか、余裕が違う。

のめりこんでもない、研究しつくしてもない。

きっとなんとなく練習不足のままスタジオに現れて、その場で楽譜を見て、
「ふむ、この曲はこういう曲か、まあそれなりにチャチャッと弾いてみるか。」と葉巻をくわえたままピアノに向かっている。(←勝手な想像です)

なのに、頑張ってこの曲の真髄を発見しようと日々ピアノと、ショパンと、そして自分と向かい続けたピアニストより遥かにいい。

格が違う、というか。

やっぱり大巨匠なんですなぁ。

そしてまたノクターンのように神経質で繊細な曲だからこそ、この人の大らかさがぴったりくるのかもしれない。

まだまだ自分は狙い過ぎてるな。

いつの日か、ピアノに座って何も考えずにポンと音を出したら、もうそれで全て表現しつくされてます、っていうような世界にたどりつけるのかな。

すごい人たくさんいるなぁ。

ホロヴィッツもルービンシュタインもフランソワもコルトーもバックハウスもシュナーベルもリヒテルもギーゼキングも。

もうみんなこの世にいないけど。

録音が残ってるっていうのは聞き手としてはこれ以上ない幸せだけど、弾き手としては悩ましいところ。

こんなものすごい人達と比べられてしまうからね。

天才が20年に一人しか現れないとしても、レコードが発明されて100年だとしたら、もうすでに5人も同時に聞けることになってしまうわけだから。

実際はそんなもんじゃない数の大巨匠の演奏を、CDで聞けてしまうわけだ。

まあでも、生に勝るものはないし。

その辺は、再現芸術という分野の大きなメリット。

あ、演奏家にとってのメリット、ってことね。

たとえホロヴィッツと同じ弾き方だったとしても、もうホロヴィッツの音は永遠に生で聞くことは出来ないわけだから、もし目の前でホロヴィッツと同じ音色を出せるピアニストがいたとしたら、それはそれで素晴らしいこと。

別に、必ずしも人と違うわなきゃいけないわけでもないし、新しいことをしなきゃいけないわけでもない。

とにかく、いい演奏だったらそれでいい。

亡くなってしまった演奏家とは、すでに同じ土俵にはいないわけです。

その点作曲家は大変だろうな。

楽譜に書き記すという点では、今の時代に生きる作曲家もモーツァルトも同じ土俵での勝負。

まあ時代性とかはあるかもしれないけど、でも、今の時代の流行廃りとかとはすでに関係なくなっているのがクラシックの世界。

バッハの構築性と比べられ、モーツァルトの天才性と比べられ、ベートーヴェンの力強さと比べられ、ショパンの繊細さと比べられ、リストの華やかさと比べられ・・・・・・・・

演奏家で良かった^_^;

いやはや、こんなに長い文章を書く予定ではなかったのだが・・・・

いまいちまとまらないけど、こんなところにしとこう。

まあ、あーだこーだ考えたところで結局自分は自分の音楽をやるだけだ!!note

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コメント

いつもながら、「楽しめるのに深いブログ」に敬服です。
今日もまた一日頑張ろうって思えます。
私にとってはウコンより効力があります~~(笑)

投稿: chiarina | 2008年9月26日 (金) 02時40分

マズルカに感覚がぴったりくるようですが、このところ リズムにのりのりの音楽にもかかわってきていることも、どこかにあるのかもしれませんね ごくしぜんに・・・★
ルービンシュタインのノクターン
・…勝手な想像はいえてますね!!そして さりげなく響いてくる音色は暖かいのです♪

投稿: ののはな | 2008年9月26日 (金) 01時14分

 あと一週間ですね♪松本さんからショパンを練習~なんて言葉を聞くと、こちらも気持ちが盛り上がってきますhappy01
季節の変わり目ですけどお体大切にねpaper
風邪なんてひいていられませんぞ~がんがん肉食べて頑張ってください~scissors

投稿: MIKI | 2008年9月25日 (木) 23時00分

ピアニストの方って長い曲でも暗譜してるからすごいですよねsign01
10分くらいある曲とか普通に暗譜してて記憶力すごいなって思いますもんshine
あと,ピアニストの方って何気に高学歴な人多いですよねimpact

投稿: 彩凛 | 2008年9月25日 (木) 20時56分

私の場合、最近の曲がすぐ抜けるのは完全にトシのせいです。
何ヶ月弾いても、あっという間(爆)。
20歳以前に弾いた曲は、当時はたいして練習してなかったのにそれでも今弾けるってどういう・・・(泣)。

今では日常生活は、ドラマ見てても
「えっと、この俳優さんの名前・・えっと・・えっと・・奥さんの名前はわかるし、やった役は思い出せるんだけど・・えっと誰だっけ?」という状態。携帯を冷蔵庫に入れて忘れてることもあるし。
そんな脳ミソで、曲を暗譜しようとするだけエライと思って、自分を慰めてます。

・・あ、松本さんはまだお若いし、それにもともとの能力がすごいレベルでいらっしゃるから、こういうこととは無縁ですよね。

投稿: いぞるで | 2008年9月25日 (木) 18時35分

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